乳白の胎にコバルトの青と水色　釉薬付きクオーツ　ニシャプール等に限定の希少ビーズ

本品は、クオーツ（水晶と同じ二酸化ケイ素の鉱物）に、釉（うわぐすり、釉薬）をかけて、ガラス状の表面を成形した希少ビーズです。唯一出会ったビーズで、釉薬つきクオーツ（glazed　quartz）と称され、1100-1200年頃に、イラン東北部のニシャプール（アフガニスタンの西）で出土します。　本品の最下部で釉薬の剥落部分から、白い粒々の胎がわずかに覗いています（9枚め）。穿孔近くには刻まれた横線と、向い側に、縦に長い窪みが見られます。胎は細長の菱形で、表は小高く身に着ける裏側は平です。モース硬度7の硬い胎の穿孔は、片側でやや大きく、弓利用の回転器具を用いたと想定されます。　クオーツの胎を、ミルク色と、多分、コバルトを用いた深い青や水色のガラス状物質で覆っています。研究書A Bead Timelineには、1100-1200頃の欄に三角、丸玉、楕円など10例ほどが掲載され、9-11Cにニシャプール出土の、邪視への護符と説明しています。ただ、出土地層は、9-10Cより大いに古いともいわれます。　深い青や青緑の釉薬つきカルセドニー（二酸化ケイ素）の刻まれた印のビーズは、アフガニスタン北西部バルフやマザーリシャリフ地域で産出され、狭い地域領域でのみ制作されました。本品には、刻み線と窪み以外の印はありませんが、類例では十字や菱形など刻まれ、ササン朝期（3-7C)に制作されたとされています。類例を多く示す研究では、前2C-前3C頃にアフガニスタンのバルフを首都としたバクトリア王国で、あるいは、以前のこの地域で、クオーツの胎に、当初は彩色無しで菱形などを刻んで成形し、数百年の後に、汚れと使い疲れの上に釉薬がかけられた跡があり、彩色は大いに後とされます。釉薬とは、 陶器、ファイアンス、本品などの鉱石に付されるガラス状のコーティングを指し、滑らかな胎に釉薬を付着させるため古くは粘着性接着剤を用いたり、胎の組成と釉薬が高熱処理でガラス状物質成を報じさせました。古代エジプト）やメソポタミアで、陶器やレンガに釉薬が使われています。　本品は、白い胎に釉薬のバクトリア・ビーズの後継で、ニシャプールなどで限定的に制作の、詳細は未解明な、釉薬付きクオーツに属する、胎の白と彩色の青・水色が美しい、不思議なビーズです。サイズ：長さ　約14㍉　幅（再細部）　約8㍉　孔径　約…

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